役所の税務担当として、毎日申告の相談を受けてきた筆者がズバリ解決します!
主な提出先
所得の情報が必要な場合に提出を求められます。低所得者に対するサービスを受ける場合や、ローンの借入れなどに使われます。
提出先 | 主な用途 |
---|---|
金融機関 | ローンの借入れ |
市区町村 | 児童手当の申請 |
年金事務所 | 公的年金保険料の減免 |
勤め先の健康保険組合 | 健康保険の扶養手続き |
申請方法
申請窓口
各市区町村役場の市区町村民税担当課(課税課、税務課など) | |
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各市区町村役場の支所 | コンビニ |
※コンビニの場合は、マイナンバーカード(個人番号カード)が必要です。 |
郵送による場合
手数料は郵便局の為替窓口で購入する定額小為替証書を同封することにより支払います。また、返信用封筒として、切手を貼り付けた封筒を同封します。
主な必要書類
窓口での申請
現金(手数料) | 本人確認書類 |
---|---|
※300円程度(市区町村により異なる) | ※運転免許証、健康保険証など |
証明書交付請求書 | 委任状 (本人以外が請求する場合) |
※窓口で直接記入します(印鑑不要)。市区町村のHPからも印刷できます。 | ※同居の親族であれば不要とする市区町村もあります。 |
郵送での申請
定額小為替証書(手数料) | 本人確認書類 |
---|---|
※何も記入しません。 | ※運転免許証、健康保険証など |
証明書交付請求書 | 返信用封筒 |
※市区町村のHPから印刷します。 | ※自宅の住所を記入し、切手を貼ります。 |
委任状 (本人以外が請求する場合) |
|
※同居の親族であれば不要とする市区町村もあります。 |
証明書の記載事項
- 納税義務者の氏名、現住所、賦課期日(1月1日)の住所
- 所得金額
- 所得控除額
- 課税標準額
- 都道府県民税額、市区町村民税額
- 本人該当(障害者、寡婦(夫)など)
- 扶養該当(控除対象配偶者の有無、扶養親族の人数など)
住民税(都道府県民税・市区町村民税)の計算過程が記載されています。
所得証明書・課税証明書・非課税証明書とは
名称は市区町村により異なる
所得証明書・課税証明書・非課税証明書は、いずれも個人の所得や住民税(都道府県民税・市区町村民税)の額を証明する書類です。住民税が課税されていれば「課税証明書」、課税されていなければ「非課税証明書」と呼ばれます。
一方で「所得証明書」と「課税証明書」・「非課税証明書」の使い分けは市区町村により異なります。扶養控除などの所得控除の記載の有無で名称を使い分ける場合が一般的ですが、東京都内の市区町村のように「所得証明書」の名称をそもそも使わない場合もあります。
扶養人数等の記載の有無 | |||
---|---|---|---|
有又は無 | 有又は無 | ||
住民税 |
非課税 | 非課税証明書 | 所得証明書 |
課税 | 課税証明書 |
なお、消費者金融業者等では「収入証明書」の提出を求める場合がありますが、「所得証明書」「課税証明書」「非課税証明書」のことを指している場合がほとんどです。
個人の全ての所得を証明する唯一の証明書
所得証明書・課税証明書・非課税証明書は、いずれも個人の全ての所得を証明する唯一の公的証明書です。
個人の全ての所得を把握しているのは市区町村だけです。市区町村は住民基本台帳を保有しているため、各支払元から提出される所得情報について、各個人に紐づけることができます。一方で、税務署(国)は住民基本台帳を保有していないため、各支払元から提出される所得情報について、各個人に紐づけることができません。そのため、マイナンバーを導入し各個人に紐づけることができることとなりましたが、マイナンバーの記載に不備がある等、完全に紐づけられていないのが現状です。したがって、わが国では、唯一市区町村が個人の全ての所得を証明することができるのです。
源泉徴収票・住民税決定通知書
提出先のなかには、源泉徴収票や住民税(都道府県民税・市区町村民税)決定通知書の提出を求める場合があります。しかし、両者はともに全ての所得を証明するものではありません。
源泉徴収票 | 住民税決定通知書 | |
---|---|---|
見本 | ||
記載範囲 | 発行した勤務先のみ | 給与から特別徴収(天引き)される分のみ |
扶養人数等の記載の有無
所得証明書・課税証明書・非課税証明書は扶養の人数や障害の有無等が記載されます。プライバシー上、提出先に知られたくない情報でもあるため、記載を省略することができます。ただし、全ての情報が必要な場合もあるため、不安であれば提出先に確認した方が無難です。
所得控除の内訳(扶養人数、障害の有無など)は省略可能。
ただし、提出先によっては省略不可の場合も。
収入は証明できない
住民税の計算の基礎となるのは「収入」ではなく「所得」です。「収入」とは額面金額をいい、「所得」とは「収入」から「必要経費」を差し引いた後の金額です。
個人事業主を例にすると、80万円で仕入れた商品を100万円で販売した場合、売上の100万円が「収入」、仕入原価の80万円が「必要経費」となり、「所得」は100万円-80万円=20万円です。つまり、儲かった分(利益)に対して課税されます。サラリーマンの場合は給与の額面が「収入」になりますが、「必要経費」が不明確です。スーツやかばんなどの購入費が挙げられますが、全てのサラリーマンがそれらの領収書を集めて税務署に確定申告した場合、納税者、税務署の職員ともに膨大な事務量が生じてしまいます。そのため、所得税法に基づき、一定の計算式により必要経費が決まります。「収入」から「必要経費」を差し引いた額が「所得」になります。
収入 | 必要経費 |
所得 |
「収入」がいくら1億円あっても「必要経費」も1億円あれば、儲け、すなわち所得は0円です。そのため、「収入」を証明しても何の意味もありません。所得証明書・課税証明書・非課税証明書は「所得」を証明する書類であって、「収入」を証明する書類ではないのです。
年度の切り替え
徴収方法 | 新年度の交付開始 |
---|---|
給与からの特別徴収(天引き)のみ | 毎年5月20日前後 |
上記以外 | 毎年6月10日前後 |
所得証明書・課税証明書・非課税証明書は、前年1月1日から12月31日までの所得を証明する書類です。住民税は翌年度に課されるため、令和2年1月1日から12月31日までの所得について令和3年度の住民税が課されます。したがって、令和2年度所得証明書(課税証明書・非課税証明書)とは、令和2年1月1日から12月31日までの所得を証明したものです。前年分の所得が記載されていることに注意が必要です。
新年度の所得証明書・課税証明書・非課税証明書は、新年度の住民税が課された日から取得することができます。新年度の住民税は、給与からの特別徴収(天引き)については、5月20日前後、それ以外については6月10日前後に課されます。したがって、令和2年1月1日から12月31日までの所得を証明する所得証明書・課税証明書・非課税証明書は、令和3年5月20日前後又は6月10日前後から取得することができるようになります。
所得の算定期間 | 証明書の交付期間 | |||
前年1月1日~前年12月31日 | 5月20日前後又は6月10日前後~ |
証明書が発行されない場合
住民記録がない市区町村に請求した場合
住民税はその年度の初日(4月1日)の属する年の1月1日に住所がある市区町村で課税されます。
令和2年12月20日に横浜市から町田市に転居した場合、令和3年度の住民税は、令和3年4月1日の属する年(令和3年)の1月1日に住民記録のある町田市で課税されます。そのため、横浜市に請求しても取得することができません。
一方、令和3年1月10日に横浜市から町田市に転居した場合、令和3年度の住民税は、令和3年4月1日の属する年(令和3年)の1月1日に住民記録のある横浜市で課税されます。そのため、町田市に請求しても取得することができません。
令和N年度の証明書
令和N年1月1日の市区町村で交付
市区町村に所得の情報がなく、かつ、税金上、扶養されていない場合
申告書が提出されていなかったり、勤務先が区町村に給与支払報告書を提出していなかったりする場合、市区町村には所得の情報がありませんので、所得を証明することができません。
ただし、税金上扶養されている場合は、例外として所得情報を空欄にして所得証明書・課税証明書・非課税証明書を交付する場合があります。この場合、所得金額は分かりませんが、住民税額は0円と表示されるため、課税されるだけの所得はないことは分かります。
なお、「税金上扶養されている」とは、親族が住民税上、扶養控除または配偶者控除を適用している場合をいい、健康保険上の扶養とは異なります。