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譲渡益(売却益)の計算方法
譲渡益(売却益)の計算方法
譲渡価額(売却金額)-(取得費(取得価額)+売却手数料等)
項目 | 計算方法 |
---|---|
譲渡価額(売却金額) | 売却時の株価×数量 |
取得費(取得価額) | 購入時の株価×数量+購入手数料等 |
売却手数料等 | 売却手数料等 |
具体例
8月1日(購入):株価400円(1,000株)で約定
8月9日(売却):株価500円(200株)で約定
取引金額 | 手数料(税抜) |
---|---|
5万円まで | 50円 |
10万円まで | 90円 |
20万円まで | 105円 |
50万円まで | 250円 |
日付 | 区分 | 株価 | 数量 | 手数料 | 消費税等 | 総額 |
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8/1 | 購入 | 400円 | 1,000株 | 250円 | 25円 | 400,275円 |
8/9 | 売却 | 500円 | 200株 | 90円 | 9円 | 100,099円 |
取得費:500円×200株+(90円+9円)=100,099円
譲渡益:(400円×1,000株)-(100,099円+(250円+25円))=299,626円
同一銘柄を複数回購入した場合の譲渡益(売却益)
異なる株価で複数回購入した場合における取得費の計算方法を解説します。
株式・投資信託
計算方法
総平均法に準ずる方法により取得費を計算します。
総平均法に準ずる方法
(A+B)÷(C+D)=1単位当たりの金額
A=株式等を最初に購入した時(その後既にその株式等を譲渡している場合には、直前の譲渡の時)の購入価額の総額
B=株式等を最初に購入した後(その後既にその株式等を譲渡している場合には、直前の譲渡の後)から今回の譲渡の時までの購入価額の総額
C=Aに係る株式等の総数
D=Bに係る株式等の総数
具体例
・1月10日から2月20日にかけて3回購入し、800株を保有している。
・3月4日に300株を750円で売却した。
・4月2日に700円で400株購入した。
・6月1日に750円で200株売却した。
日付 | 購入 |
売却 |
||||
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単価 | 数量 | 購入価額 | 単価 | 数量 | 売却価額 | |
1/10 | 800円 | 500株 | 400,000円 | – | – | – |
2/15 | 600円 | 200株 | 120,000円 | – | – | – |
2/20 | 500円 | 100株 | 50,000円 | – | – | – |
3/4 | – | – | – | 713円 | 300株 | 213,750円 |
繰越 | 713円 | 500株 | 356,500円 | – | – | – |
4/2 | 700円 | 400株 | 280,000円 | – | – | – |
6/1 | – | – | – | 708円 | 200株 | 141,600円 |
繰越 | 708円 | 700株 | 356,500円 | – | – | – |
売却した場合、最初に購入した時又は最後に売却した時から今回売却する直前までの購入価額の1株当たりの単価を求め(1円未満切上げ)、売却した数量を乗じて取得費を求めます。
・3/4の取得費の求め方
(400,000円+120,000円+50,000円)/(500株+200株+100株)
=712.5円 →713円(1円未満切上げ)
713円×300株=213,750円
・6/1の取得費の求め方
(356,500円+280,000円)/(500株+400株)
=707.222… →708円(1円未満切上げ)
708円×200株=141,600円
信用取引
決済
信用取引の取得費(取得価額)は、決済方法より取扱いが異なります。
決済方法 | 取得費(取得価額)の取扱い |
---|---|
差金決済 | 建玉ごとに個別に計算します(個別法)。 |
現金決済(現引) | 買方の場合で、証券会社が保有する現物株を購入することで決済することをいいます。 株式取得後に売却した場合は、通常の株式として総平均に準ずる方法により計算します。 |
現金決済(現渡) | 売方の場合で、自身が保有する現物株を証券会社に売却することで決済することをいいます。 売却に当たっては、通常の株式として総平均に準ずる方法により計算します。 |
配当落調整金
株式を保有したまま配当の権付き最終日を迎えた場合、買い方は売り方から配当金相当額を受け取ることができます。
決済の状況 | 建玉 | 取扱い |
---|---|---|
決済前 | 買い方 | 買建玉の取得費(取得価額)から差し引く |
売り方 | 売建玉の収入金額から差し引く | |
決済後 | 買い方 | 買建玉の収入金額に算入 |
売り方 | 売建玉の取得費(取得価額)に算入 |
金利
買い方
証券会社から資金の融資を受けて買建てを行うため、その融資に係る利息を証券会社に支払います。
売り方
株式を借りて売り、その売却代金を証券会社に預けることになるため、決済までの間の利息を証券会社から受け取ります。
建玉 | 取扱い |
---|---|
買方 | 売却手数料等に算入 |
売方 | 株式の売却による収入金額に算入 |
品貸料(逆日歩)
証券会社が保有する株式に不足が生じた場合、外部から調達するコストを品貸料(逆日歩)といいます。品貸料は売り方が支払い、買り方が受け取ります。
建玉 | 取扱い |
---|---|
買い方 | 株式の売却による収入金額に算入 |
売り方 | 売却手数料等に算入 |
先物取引
対象となる取引
(1)大阪取引所
TOPIX先物、ミニTOPIX先物、東証REIT先物、TOPIX Core30、日経225先物、日経先物mini、JPXインデックス400先物、東証マザーズ先物、NYダウ先物
(2)東京金融取引所
取引所CFD(株365)
建玉を転売又は買戻しにより決済した場合(仕切)や取引清算日(SQ)により清算した場合(SQ決済)に損益が確定し、これを差金等決済といいます。
差金等決済により確定した利益又は損失を収入に算入し、取引手数料を必要経費等に算入します。例えば、100万円の建玉を120万円で反対売買した場合の収入は、120万円ではなく、20万円となります。
これらの計算は建玉ごとに行います(個別法)。
収入 差金等決済を行ったことにより 確定した利益又は損失 |
必要経費等 取引手数料 |
先物取引に係る雑所得等 |
オプション取引
対象となる取引
日経255オプション
(1)反対売買
取引最終日までに建玉を転売又は買戻しにより決済することを反対売買といいます。
(2)権利行使(コールオプションの買い手)
原資産の市場価格が上昇した場合、権利を行使し、利益を得ることができます。
このときの利益は、原資産の市場価格-行使価格-プレミアムとなります。
(3)権利放棄(コールオプションの買い手)
原資産の市場価格が下落した場合、権利を放棄することができます。
このときはじめに支払ったプレミアムの金額が損失となります。
(4)履行義務(コールオプションの売り手)
原資産の市場価格が上昇し、買い手が権利を行使した場合、それに応じなければなりません。
このときの損失は、行使価格-原資産の市場価格+プレミアムとなります。
(5)権利行使(プットオプションの買い手)
原資産の市場価格が下落した場合、権利を行使し、利益を得ることができます。
このときの利益は、原資産の市場価格-行使価格-プレミアムとなります。
(6)権利放棄(プットオプションの買い手)
原資産の市場価格が上昇した場合、権利を放棄することができます。
このときはじめに支払ったプレミアムの金額が損失となります。
(7)履行義務(プットオプションの売り手)
原資産の市場価格が下落し、買い手が権利を行使した場合、それに応じなければなりません。
このときの損失は、行使価格-原資産の市場価格+プレミアムとなります。
上記により確定した利益又は損失を収入に算入し、取引手数料を必要経費等に算入します。例えば、100万円の建玉を120万円で反対売買した場合の収入は、120万円ではなく、20万円となります。
これらの計算は建玉ごとに行います(個別法)。
収入 確定した利益又は損失 |
必要経費等 取引手数料 |
先物取引に係る雑所得等 |
外国為替証拠金取引(FX取引)
外国為替差益や取引通貨の金利差(スワップポイント)を収入に算入し、取引手数料を必要経費等に算入します。
これらの計算は建玉ごとに行います(個別法)。
収入 外国為替差益 スワップポイント |
必要経費等 取引手数料 |
先物取引に係る雑所得等 |