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【支払方法は?】住民税の普通徴収と特別徴収の違いを徹底解説

相談者
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住民税の納付方法が分かりません。「普通徴収」「特別徴収」って何ですか?

役所の税務担当として、毎日申告の相談を受けてきた筆者がズバリ解決します!

普通徴収と特別徴収

普通徴収:自分で納める
特別徴収:給与または公的年金から天引き

住民税を定める地方税法では、自分で納めることを原則としているため、自分で納める方法を普通徴収と呼んでいます。

普通徴収は、
・住民にとっては納税する手間がかかる
・役所にとっては徴収する手間がかかる
というデメリットがあります。

そこで、給与の支払いを受けている人や公的年金を受給している人は、給与や公的年金から天引きすることとされました。原則である普通徴収に対する例外であるため、特別徴収と呼んでいます。

法律上は自分で納める普通徴収を「普通の徴収方法」、給与や公的年金からの天引き(特別徴収)を「特別の徴収方法」とするものの、日本国民の多くが給与所得者か年金受給者であるため、特別な徴収方法の方が一般的になっていることが、話を分かりにくくしています。

普通徴収の方法

1年間の税額を4等分して以下の納期限に納めます。

第1期 6月30日
第2期 8月31日
第3期 10月31日
第4期 翌年1月31日

※当日が土日である場合は、次の月曜日が該当します。
※納付書で納める場合は、上記の納期限より前に納めることができます。

納付方法は、主に以下のようなものがあります。

普通徴収の納付方法
  • 納付書(金融機関、コンビニエンスストアなど)
  • 口座振替(口座からの引き落とし)
  • Pay-easy(ペイジー)
  • モバイルレジなどのアプリ

納付書(現金)

市区町村の住民税担当課(税務課、課税課、市民税課など)から送付される「納税通知書」に、納付書が同封されています。
納期限ごとに別々の納付書が同封されていますので、それぞれの納期限までに、現金を持参して、所定の窓口で納めます。

一般的な納付窓口(市区町村によって異なります。)
金融機関(銀行、信用金庫、信用組合)
ゆうちょ銀行、郵便局
市町村役場、支所などの窓口
コンビニエンスストア(納付書1枚につき30万円まで
※納付書の裏面に納付窓口の一覧が記載されています。

口座振替(口座からの引き落とし)

自分の口座から自動的に引き落とします。
口座振替をするには、口座振替依頼書を提出する必要があります。

郵送による手続き
自宅に送付される「納税通知書」に同封されている口座振替依頼書を市区町村役場の税務担当課に郵送します。
窓口での手続き
口座のある金融機関または市区町村役場の税務担当課の窓口に届出印を持参します。金融機関名、支店名、口座番号を記入しますので、通帳などを持参した方がよいでしょう。

いったん手続きを行うと、停止手続きを行わない限り、翌年度以降も口座振替が継続します。
また、市区町村によっては、税目ごと(住民税、固定資産税、軽自動車税など)によって別々に設定する必要がある場合もあります。

手続きの締切日は、納期限の前月10日までとする市区町村が一般的です(市区町村により異なります。)。
例えば、下の表で6月1日に手続きをした場合は、第2期(8月31日)から口座振替が始まりますので、第1期(6月30日)は納付書(現金)で納めなければなりません。

期別 納期限 締切日
第1期 6月30日 5月10日
第2期 8月31日 7月10日
第3期 10月31日 9月10日
第4期 翌年1月31日 12月10日

ちなみに、納期限の前営業日までに預金残高を確保しておかないと、残高不足で延滞となる場合がありますので注意が必要です。

また、市区町村としては、徴収の事務負担が少ない口座振替を推奨しています。
督促などの徴収コストも他の人が納付した税金からまかなわれていることから、推奨するのは当然のことです。

Pay-easy(ペイジー)

対応する市区町村が増えているのがペイジーです。
パソコンやスマホ・携帯電話、ATMから納付することができるサービスで、金融機関の窓口やコンビニのレジに並ぶ必要がありません。

ペイジー

モバイルレジ

一部の市区町村では、「モバイルレジ」など、スマートフォンや携帯電話のアプリからも納付できます(納付書1枚につき30万円まで)。

モバイルレジ



給与からの特別徴収(天引き)の方法

サラリーマンやアルバイト・パートなど、給与の支払いを受けている人は、原則として給与から天引きされます(特別徴収)。

前年1月から12月までの所得をもとに住民税が算定され、12等分して6月から翌年5月まで天引きされます。

そのため、新年度の住民税の額が上がった場合、6月分の給与から反映されます。

具体例
令和2年度:住民税年額60,000円(月額5,000円)
令和3年度:住民税年額72,000円(月額6,000円)
→令和3年5月まで:5,000円
令和3年6月から:6,000円

毎月、勤務先が給与から差し引き、翌月の10日に納入

給与からの特別徴収の場合、毎月、勤務先が給与から差し引き、翌月の10日に全従業員分を市区町村に納めます。

勤務先が従業員に代わって納めるこの方法は、従業員(本人)の手間が省けるメリットがある一方で、勤務先の手間が増えるデメリットがあります。

特別徴収の推進
特別徴収は勤務先が従業員に代わって納めることから、普通徴収に比べて徴収率は高い傾向にあります(特別徴収99.8%、普通徴収95.3%(平成28年度))。
そのため、国や自治体は、平成29年度以降、これまで特別徴収を実施していなかった事業所に対して特別徴収を実施させるなど、特別徴収を推進してきました。

給与からの特別徴収を普通徴収に切り替えることができる場合

以下に該当する場合は、特別徴収から普通徴収に切り替えることができます。

・総従業員数が2人以下
・他の勤務先で既に特別徴収を行っている
・給与が少なく税額が引けない
・給与の支払が不定期
・個人事業主の専従者
・退職者又は退職予定者

ただし、手続きはあくまでも勤務先が行いますので、従業員が自由に切り替えることはできません。

普通徴収から給与からの特別徴収に切り替えることができる場合

普通徴収で納付していた人が就職したことにより、残額を給与からの特別徴収に切り替える場合は、勤め先から市区町村に「特別徴収切替届出(依頼)書」を提出してもらいます。

特別徴収切替届出(依頼)書

2社以上勤めている場合は「主たる勤務先」から特別徴収される

2社以上勤めている場合は、「主たる給与の支払を受けている勤務先」から特別徴収されます。

では、どのように「主たる給与の支払を受けている勤務先」と判断するのでしょうか。
一郎さんはA株式会社とB株式会社に勤めていて、A株式会社がメインの勤務先だったとします。
B株式会社の給与担当者が「B株式会社は一郎さんの主たる勤務先でない」と把握していれば、市区町村に普通徴収希望として報告しますので問題なくA株式会社から特別徴収されます。

問題は、「B株式会社は一郎さんの主たる勤務先である」と思っていた場合です。原則どおり特別徴収として市区町村に報告しますので、特別徴収が2社になってしまいます。
この場合、市区町村は、給与の金額や就職期間をもとに、主たる勤務先を決定します。
これにより、A株式会社のみから特別徴収を行います。

特別徴収されなくなったB株式会社には、他社で働いていることがバレる?
上の例で、B株式会社からは特別徴収されなくなったことから、B株式会社には、「主たる勤務先」が他にあることがバレてしまうことになるのでしょうか。

答えは「詳しい人であれば分かる。」というところです。
特別徴収がされなくなった場合でも、B株式会社には市区町村から「特別徴収税額0円」として通知が送られます。
最近では、個人情報保護の観点から、圧着式の通知書により明細が担当者に見られないようになっています。そのため、特別徴収税額が0円となったの理由が、確定申告をして税額が下がったからなのか、それとも他に「主たる勤務先」があるのかは特定できないようになっています。ただ、給与の金額が多く、明らかに税額が0円とならないと分かるような担当者であれば、勘づくかもしれません。