ふるさと納税|総務省通知に見る返礼品の今後

公的手続き

ふるさと納税|総務省通知に見る返礼品の今後

ふるさと納税の返礼品の過熱競争を受けて、平成30年9月1日、総務省は、「過度な返礼品を送付する団体については、ふるさと納税の対象外にすることもできるよう、制度の見直しを検討する」としました。

このベージでは今後のふるさと納税についてこれまでの総務省の見解をもとに検証します。

※平成31年3月の税制改正により、一定の条件に該当する都道府県・市区町村に対する寄附について、ふるさと納税の対象外となりました。詳しくはこちらのページをご覧ください。

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ふるさと納税の返礼品

「ふるさと納税」とは、所得税のおける寄附金控除、都道府県・市区町村民税(住民税)における寄附金税額控除を利用して、都道府県・市区町村に対する寄附金の額の一部を所得税や住民税から控除する制度をいいます。

出身地に限らず、全ての都道府県・市区町村に対して支出した寄附金が控除の対象となります。そのため、税収の少ない市区町村は、寄附者に対して豪華な返礼品を贈呈するなど、寄附金の受入れを積極的にPRしています。

しかし、「地域社会の会費」の性格を持つ住民税が、居住していない地域に流れると、自らが住む自治体の運営そのものが成り立たなくなり、地方自治の根幹が揺らいでしまうという問題があります。

返礼品に対する総務省の見解

平成27年4月1日付け通知

ふるさと納税はあくまでも所得税や住民税を軽減するための制度であるため、住民税を所管する総務省は、当初、返礼品の存在についてコメントしない立場をとっていました。しかし、返礼品が寄附に対する対価となっている現状から、平成27年4月1日付けで各都道府県知事、各指定都市市長あてに次のとおり通知しました。

ア 当該寄附金が経済的利益の無償の供与であることを踏まえ、寄附の募集に際し、次に掲げるような、返礼品(特産品)の送付が対価の提供との誤解を招きかねないような表示により寄附の募集をする行為を行わないようにすること。
・「返礼品(特産品)の価格」や「返礼品(特産品)の価格の割合」(寄附額の何%相当など)の表示(各地方団体のホームページや広報媒体等における表示のみでなく、ふるさと納税事業を紹介する事業者等が運営する媒体における表示のための情報提供を含む。)
イ ふるさと納税は、経済的利益の無償の供与である寄附金を活用して豊かな地域社会の形成及び住民の福祉の増進を推進することにつき、通常の寄附金控除に加えて特例控除が適用される仕組みであることを踏まえ、次に掲げるようなふるさと納税の趣旨に反するような返礼品(特産品)を送付する行為を行わないようにすること。
換金性の高いプリペイドカード等
高額又は寄附額に対し返礼割合の高い返礼品(特産品)

返礼品(特産品)の送付等、ふるさと納税に係る周知、募集その他の事務について、寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応を行うこと。また、各都道府県においては、域内市区町村の返礼品(特産品)送付が寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応となるよう、適切な助言・支援を行うこと。

平成28年4月1日付け通知

平成27年4月1日付け通知を受け、換金性の高い返礼品(Tポイント、商品券など)や高額な返礼品(パソコン、タブレットなど)を廃止をする市町村があった一方、法的拘束力のない通知であることを理由に引き続きこのような返礼品を継続する市町村もありました。そのため、総務省は再び通知を発出し、次のような文言が追加されました。

次に掲げるようなふるさと納税の趣旨に反するような返礼品(特産品)を送付する行為を行わないようにすること。
① 金銭類似性の高いもの(プリペイドカード、商品券、電子マネー・ポイント・マイル、通信料金等)
資産性の高いもの(電気・電子機器、貴金属、ゴルフ用品、自転車等)
③ 高額又は寄附額に対し返礼割合の高い返礼品(特産品)

平成29年4月1日付け通知

平成28年4月1日付け通知では、前回の通知と内容にさほど相違がなかったことから、各市町村の対応に変化は見られませんでした。一方で、「ふるさとチョイス」「さとふる」などの仲介サイトが一般化し、返礼品競争はさらに加熱していきました。

そこで、総務省はさらに通知を発出し、「国民の信頼を損なう」等の強い文言を記載するとともに、返礼品の見直しについて調査をすることとしました。

各地方団体に対しては、「地方税法、同法施行令、同法施行規則の改正等について」(平成 28 年4月1日付総税企第 37 号)等を通じて、ふるさと納税に関する事務について、良識ある対応をお願いしてきましたが、一部の団体においてふるさと納税の趣旨に反するような返礼品が送付されているような状況が続けば、制度全体に対する国民の信頼を損なうほか、他の地方団体に対しても好ましくない影響を及ぼすことが懸念されます。

総務省では、個別の地方団体における返礼品送付の見直し状況について、今後、随時把握する予定であることを申し添えます。

平成30年4月1日付け通知

再三にわたる総務省の通知により、次第に返礼割合が3割を超える返礼品を贈呈する市町村が減少し始めました。それでもなおそのような返礼品の贈呈を継続する市町村が存在していること、地元に関係のない返礼品を贈呈する市町村が存在していることを踏まえ、総務省はさらに通知を発出しました。

特に、返礼割合が3割を超えるものを返礼品としている団体においては、各地方団体が見直しを進めている状況の下で、他の地方団体に対して好ましくない影響を及ぼすことから、責任と良識のある対応を徹底するようお願いします。
また、地域資源を活用し、地域の活性化を図ることがふるさと納税の重要な役割でもあることを踏まえれば、返礼品を送付する場合であっても、地方団体の区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切であることから、良識のある対応をお願いします。

平成30年9月1日 野田総務大臣会見

平成29年4月1日付け通知に基づき、総務省は「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査結果」を公表しました。

(参考)調査結果(平成30年9月1日時点)
・返礼割合3割超の団体は着実に減少しているが、で246団体(全体の14%)が残っている。
・「地場産品以外」と考えられる返礼品を送付していたのは235団体で、そのうちで190団体において見直しが完了していない。

この状況を受け、野田総務大臣は、定例会見で次のとおり述べました。

9月1日現在のふるさと納税の返礼品の見直し状況を取りまとめました。
全国的な見直しが進んでいる一方で、一部の地方団体では依然として必要な見直しが行われていないことが判明いたしました。
これまで、制度の趣旨に沿わない返礼品を送付する地方団体については、昨年4月と本年4月の2度にわたって、総務大臣名での通知を発出するとともに、あらゆる機会を通じて必要な見直しを要請し、市町村長お一人お一人の責任と良識ある対応をお願いしてまいりました。
しかしながら、依然として一部の地方団体において通知に沿った対応が行われていない実態があります。大変残念なことではありますが、これまでと同様に見直し要請を行うだけでは自発的な見直しが期待できない状況です。
その一方で、通知に従って返礼品の見直しを行った団体からは、「正直者が馬鹿を見ないようにしてほしい」との切実な声をいただいております。
また、先日の山形県への出張においては、ふるさと納税を有効に活用し、具体的な成果を上げている団体の取組を視察させていただきました。この制度を健全に発展させていくために、良い取組を伸ばしつつ、問題のある事例については、しっかりと正していく必要があるとの想いを強くしたところです。
そこで、過度な返礼品を送付し、制度の趣旨を歪めているような団体については、ふるさと納税の対象外にすることもできるよう、制度の見直しを検討することといたしました。
総務省において、見直し案を取りまとめ、与党の税制調査会においてご議論いただきたいと思います。
このような制度見直しにより、制度本来の趣旨を取り戻せると考えています。
また、一定のルールの中で地方団体同士が切磋琢磨することにより、全国各地の地域活性化に繋がるとともに、優れた地域資源が発掘されることも期待されます。
現在、ふるさと納税制度は存続の危機にあります。
このまま一部の地方団体による突出した対応が続けば、ふるさと納税に対するイメージが傷ついて、制度そのものが否定されるという不幸な結果を招くことになりかねません。
制度の趣旨に沿わない返礼品を送付している地方団体の首長におかれては、今回、制度の見直しの検討をせざるを得なくなったという現状を真摯に受け止めていただき、1日も早く必要な見直しを行っていただきたいと思います。

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今後の対応

平成30年9月1日の記者会見を受けて、来年度の税制改正に大きな影響を与える「与党税制調査会」で議論が行われると思われます。

税制調査会は12月ごろに行われ、年末に結果が自民党のホームページで公表されます。同時に行われる政府税制調査会の結果を踏まえ、年度末に税法が改正されます。今回の税制調査会で議論されれば、早ければ平成31年分の所得税、平成32年度住民税から適用されます。つまり平成31年1月1日以降に寄附したふるさと納税が対象となる可能性があります。

まずは、税制調査会の内容を見極める必要がありそうです。

※平成31年3月の税制改正により、一定の条件に該当する都道府県・市区町村に対する寄附について、ふるさと納税の対象外となりました。詳しくはこちらのページをご覧ください。

参考資料