2018年12月14日に公布された「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(平成30年法律第103号)が2019年6月14日に施行されます。このページでは、いわゆるこの「チケット不正転売禁止法」の施行により、まねきケチャのライブにどのような影響があるのか検討します。
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チケット不正転売禁止法の概要
チケット不正転売禁止法は、国内で行われる映画、演劇、音楽などの芸術・芸能やスポーツイベントなどのチケットのうち、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が明示された座席指定等がされたチケットの不正転売等を禁止する法律です。
特定興行入場券(第2条第2項・第3項第1号)
チケット不正転売禁止法では、「特定興行入場券」が取締りの対象となっています。したがって、「特定興行入場券」に該当しなければ、この法律は適用されません。
特定興行入場券とは、興行入場券であって、不特定又は多数の者に販売され、かつ、次の要件のいずれにも該当するものをいいます。
- 興行主等が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該興行入場券の券面に表示し又は当該興行入場券に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて表示させたものであること。
- 興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者又は座席が指定されたものであること。
-
興行主等が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める事項を確認する措置を講じ、かつ、その旨を上記1に規定する方法により表示し又は表示させたものであること。
(イ)入場資格者が指定された興行入場券については、入場資格者の氏名及び電話番号、電子メールアドレスその他の連絡先。
(ロ)座席が指定された興行入場券((イ)に掲げるものを除く。)については、購入者の氏名及び連絡先。
※上記を要約すると以下のとおりです(いわゆる「3要件」)。これらの要件を全て満たす必要があります。
- 興行主等が販売時に興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該入場券の券面等に表示している。
- 興行が行われる特定の日時、場所、入場資格者又は座席が指定されている。
- 興行主等が販売時に入場資格者又は購入者の氏名、連絡先を確認する措置を講じ、かつ、その旨を当該入場券の券面等に表示している、
※「特定興行入場券」に該当するチケットのイメージ(政府広報より)
※特定興行入場券に該当しない例
・招待券などの無料で配布されたチケット
・転売を禁止する旨の記載がないチケット
・販売時に購入者または入場資格者の確認が行われていないチケット
・日時の指定のないチケット
※購入時の身分確認は必ずしも公的身分証の提示等を要しません。
(参考)第197回国会 文部科学委員会 第7号(平成30年11月30日)
特定興行入場券につきましては、購入時に本人確認措置が講じられることとなっておりますが、その際、公的身分証の提示等による確認を必ずしも求めるものではありません。
※入場時の身分確認は「特定興行入場券」の要件には該当しません。
(参考)第197回国会 文部科学委員会 第7号(平成30年11月30日)
入場の際に本人確認措置を講じているかどうかということについては、特定興行入場券の要件となっているわけではありません。
不正転売の禁止(第3条)
※「特定興行入場券の不正転売」とは、興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするものをいいます(第2条第3項第4号)。
※「業として」とは、「反復性」を有する場合をいいます。したがって、反復性を有しない転売は本条の「不正転売」に該当しません。
(参考)第197回国会 文部科学委員会 第7号(平成30年11月30日)
ここに言う「業として」という点につきましては、反復継続の意思を持って行うことを意味しております。偶然の事情がたまたま数回重なって、その都度転売したというようなケースも、その販売継続の意思がなければ、業としての要件にはそもそも該当しないということが考えられます。
※「販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」が対象ですので、定価での転売は「不正転売」に該当しません。
特定興行入場券の不正転売を目的とする特定興行入場券の譲受けの禁止(第4条)
※売主(第3条)だけでなく、買主(本条)も規制の対象となります。
興行主等による特定興行入場券の不正転売の防止等に関する措置等(第5条)
- 興行主等は、特定興行入場券の不正転売を防止するため、興行を行う場所に入場しようとする者が入場資格者と同一の者であることを確認するための措置その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
※入場時の身分確認は円滑な入場等の観点から努力義務にとどめられています。
- 興行主等は、興行入場券の適正な流通が確保されるよう、興行主等以外の者が興行主の同意を得て興行入場券を譲渡することができる機会の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
※いわゆる「リセール」が該当します。
罰則(第9条)
※売主だけでなく買主も罰則の対象となります。
Live Pocketの場合
現時点では、チケット不正転売禁止法の対象外である可能性が高いといえます。
同意のない有償譲渡を禁止する旨の販売時の明示及び券面への表示
Live Pocketの利用規約では、「対象チケット又は対象イベントに参加できる権利を、インターネットオークション、ダフ屋、金券ショップなどを通じて第三者に提供する行為」を禁止事項として明示しているため、販売時の明示はされているものと考えられます。
一方で、チケット表示画面には、同意のない有償譲渡を禁止する旨についての記載がないため、この要件には当てはまらないものと考えられます。
特定の日時及び場所並びに入場資格者又は座席が指定されたもの
特定の日時及び場所が表示されるため、これに該当します。なお、まねきケチャの場合、ほとんどがスタンディングのため、「入場資格者又は座席が指定されたもの」には該当しませんが、「並びに」で接続されているため、前者に該当していれば、この要件に当てはまります。
氏名・連絡先の確認措置及び券面への表示
会員登録時に氏名、メールアドレスを登録し、当該情報に基づきログインした状態で購入するため、販売時における確認措置はされているものと考えられます。
一方で、チケット表示画面には、販売時に氏名・連絡先の確認を行った旨の記載がないため、この要件には当てはまらないものと考えられます。
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イープラスの場合
現時点では、チケット不正転売禁止法の対象外である可能性が高いといえます。また、ローソンチケット、チケットぴあ等、他のプレイガイドも同様であると考えられます。
同意のない有償譲渡を禁止する旨の販売時の明示及び券面への表示
イープラスの利用規約では、「興行主催者からの取り決めとして、弊社から購入されたチケットまたはチケット引換え時に必要な番号は、営利を目的として第三者に転売し、または転売のために第三者に提供する事は禁止されております。」と明示しているため、販売時の明示はされているものと考えられます。
一方で、チケット裏面の注意事項に「営利目的のチケットの転売はいかなる場合でも固くお断りします。」と記載されていますが、同意のない有償譲渡を禁止する旨についての記載としては不十分である可能性があります。
興行入場券の券面への表示
チケット裏面の注意事項に「営利目的のチケットの転売はいかなる場合でも固くお断りします。」と記載されているため、この要件は満たします。
特定の日時及び場所並びに入場資格者又は座席が指定されたもの
特定の日時及び場所が表示されるため、これに該当します。なお、まねきケチャの場合、ほとんどがスタンディングのため、「入場資格者又は座席が指定されたもの」には該当しませんが、「並びに」で接続されているため、前者に該当していれば、この要件は満たします。
氏名・連絡先の確認措置及び券面への表示
会員登録時に氏名、メールアドレスを登録し、当該情報に基づきログインした状態で購入するため、販売時における確認措置はされているものと考えられます。
一方で、チケット表示画面には、販売時に氏名・連絡先の確認を行った旨の記載がないため、この要件には当てはまらないものと考えられます。